~本人の笑顔と店の平和を守れ~(エピソード1)|ブログ|社会福祉法人 ル・プリ
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2026.03.15
野のゆり6次舎
テーマ:
~本人の笑顔と店の平和を守れ~(エピソード1)
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今回は少し長くなりますが、普段の私たちの仕事の様子をお伝えしたいと思います。
〇このお話の主人公
Mさん(20歳)
最近、お仕事の場面でボールを手に持ち少し離れた籠にいれる活動を行っている。一つ入れ終わるごとに職員と満面の笑みでハイタッチをしている。時折、広い空間を通ると遠くに投げ、職員を見ながら笑っていることもあった。周りの人との関わり、おふざけも大好きな明るい性格。最近まで段差が怖いのか階段を座りながら降りていたのが、今では片手は手すり、片手は職員と手をつなぎ、恐る恐る立って降りる事ができるようになるなど勇気と成長の毎日。
直近のおやつ外出で入った喫茶店にて出された食器の絵柄が気に入らなかったのか投げて割ってしまう、移動で利用したタクシーの運転手さんのメガネが気になり顔を叩いてしまうなど、少女から大人の女性への階段を上り始めている。
丁度お年頃になったところなので、自己表現の方法を模索するための行動が見られており、本人が安心して楽しみながら周囲が冷や汗をかかない形での外出支援について検討されていた。
○今回のお出かけ
近隣のスイーツ店に利用者さん2名(女性)・職員2名(男性)で外出
本日のミッション
・通常の食事的配慮(とろみ等の使用)をせず港区女子と同じ気分でスイーツを楽しむ
・店内の雰囲気に溶け込む(衝音・打音を鳴らさないための予防的かつ組織的工夫)
・職員も楽しむ(学生時代を思い出す)
・無理はしない(「ムリが通れば道理が引っ込む」的な・・・)
- 実況と解説(緊張感と笑顔。そして・・・何より安全優先)
実況:職員Y
解説:職員S
○移動編
Y:「さぁ、始まりました。Mさんの港区女子への道」
S:「今回は3回目。職員にはやや緊張の色が見えますね」
Y:「おっと、ここで職員が画像を提示しパンケーキの話をし始めましたね」
S:今のところ、Mさんもご満悦の様子で笑顔が見られていますね。」
○店舗入店後(ここからはダイジェストでお送りします)
店舗入り口が込み合っていた為、S職員が海を割るモーセの神話のように他のお客様に声掛けし道を開き、Yが本人の後ろに立ち両手を握る形でテーブルまで向かう。Mさんは通路にある置物や他のお客様に目を光らせるが、手に力が入ることはなく通路の段差も職員に体重を預けながら気分を害さず乗り越えている。
テーブルに着いてすぐに長距離の移動で足の違和感を覚え靴下を脱ごうとする為、職員が靴下を受け取る。4人掛けテーブルでソファに座ると奥まで進み職員が隣に座ると、笑顔で首をかしげる。(あら、あなたなの?)
職員の肩に顎を乗せる、と、見せかけ、職員の顔を見ながら唾を吐く。(やっぱり違うわ)
テーブルに着いてからパンケーキが運ばれるまで15分~20分。Mさんにやや高揚感を感じるが表情は落ち着いている。(パンケーキを待つ間、唾を吐く行動はしだいになくなる)
待っている間、口の中を潤そうと職員が水をスプーンで提供すると・・・
しっかりと口に含み、2秒後に職員へ吹きかけている。前回の外出にて、ジュースをスプーンで飲んでいたことをしっかりと覚えていたのか「私の口には合わないわよ」と分かりやすい意思表示。その後、お茶ゼリーを3口ほど摂取し、喉を潤している。(この時、もちろん吐き出しは見られず。)
待ちに待ったその時が来た。(職員の気持ち)
遂にパンケーキが運ばれ、Mさんもパンケーキをしっかりと確認。表情には笑みがこぼれる。記念撮影をする時に職員はMさんの片手を抑え、もう片方の手は抑えずにいたが、目の前の皿に手を伸ばすことはなかった。(ホッと一安心)職員の促しで手を合わせて「いただきます」と挨拶をするとMさんも「す」に合わせて声が出ていた。

パンケーキは非常に柔らかく、通常スプーンの先半分サイズで一口ずつ。潰す・浸す等、通常の食事で行なう配慮は一切しなかったが、本人はむせ込みや吐き出すこともなく食べることができていた。Mさんも職員も心からの笑顔がこぼれる。途中からチョコソースやメイプルシロップを掛け、Mさんオリジナルを模索。様々な方法で食べれることで自然と表情が和らぎ楽しい雰囲気に包まれる中、職員は思う。「味変のチョコソースやメイプルシロップを使い自然な味の変化で柔らかくするのは普段の食事でも応用できるのでは」と。
心の声が聞こえたのか、なぜだかMさんも笑顔で頷いている。
10分ほどで完食し、職員の促しで手を合わせ「ごちそうさまでした」、Mさんも「た」に合わせて声を出している。
退店後、本人と笑顔でハイタッチ。職員二人はガッツポーズでミッションコンプリート。
- 結果
衝音:0回
打音:0回
叫びだし:0回
笑顔:数えきれない(プライスレス)
本日の気分:水は飲まない
- エピソード1 考察
今年度、外出でのトラブルが重なっていた為、今回は「Mさんにとって刺激が多いとされる外出企画で安全に、そして安心して楽しめる」を最優先に目的を設定した。
具体的な検討として、
・職員間での作戦会議を出発前・車内・店内など複数実施し、目的・動きのすり合わせ。
・靴を脱ごうとする際は無理に履かせない。
・靴を脱ごうとする場面や店内通路では、淡々と冷静に対応。
・車イスを使用せず近隣の飲食店利用。
・駐車場は入り口近く、隣は空車になっている場所。
・上着は車内で脱ぎ、着脱時の事故予防。
・狭い場所・周りに人や物がある場合は職員が後ろに立ち、本人の手を握る。
・注目欲求を満たす為、殆どの時間本人と関わる。
・受付待ち時間や環境整理中は車内で把握し見通しの持ちづらい時間軽減。
・トイレ・精算等の離席は食器下膳後。
- エピソード2に向けて
環境的配慮・欲求を満たす関わり・見通しの持ちづらい時間の軽減等、職員が様々な配慮を行なう中で、Mさんの表情、物や人に手・足を伸ばすことが無かった点から、Mさんは「我慢」ではなく、楽しみながら活動を行えたと感じた。
水をスプーンで提供した際、スプーンを払うのではなく一度含み吐き出した為、食形態のみでなく嗜好に関しても本人の表出行動を確認出来た。また、食事場面での表出方法が物損ではなく吐き出すという行動だったため、注目獲得においても物投げや物損行為以外での代替行動獲得の可能性が示唆された。
今回はMさん・職員双方が緊張する場面もありましたが、機会を重ねる中で、Mさんにとって外出が楽しい活動に変わりつつあると感じています。今回の成功エピソードを大切に、Mさん・職員がともに安心して心から楽しめる経験を重ねていきたいと思います。
本日はお店を困らせる人ではなく、お店を明るく、テーブルを楽しい雰囲気で包む主人公でした。本人の笑顔が職員にも広がり、終始笑顔で過ごせた素敵な時間になりました。
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